BEAT CAST
PHOTOGRAPHER
YOHJI UCHIDA
写真家・内田燿司の欲しいものを勝ち取る姿勢。
© 2020 BE AT TOKYO.
BEAT CAST
Julie Giesen
2021.02.18
自分の仕事に愛を持って取り組めているか、ワクワクしているか。そう問われてドキッとする人もいると思う。「仕事のどこが、一番楽しい?」との問いに「全ての行程にワクワクします」と目を輝かせながら即答してくれたのは、ギーセン珠理さん。自分が好きだと思うものを仕事にする道に憧れて、学生時代から雑誌の編集部でアシスタントを経験。今は同じビジョンを持った友人たちと動画も配信している。彼女が雑誌や動画を通して伝えようとしているメッセージとは、そしてそのモチベーションはどこからやってくるのかを聞いてみた。
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雑誌のエディターとしてフリーランスで活躍しながら、動画のディレクションも手掛けていますが、どうして今のような活動に至ったのでしょうか?
ギーセン
大学で入ったゼミの先生が元編集者で、授業で雑誌を作ってみたのがきっかけです。小さい頃からスクラップブックを作っていたし、もともと本好き。でも仕事にするという発想はなかったし、編集の仕事についてもよく知らなかったんです。大学3年生のときに雑誌『ViVi』に出演する機会があり、担当してくれた編集者の女性がバリバリ働く女性という印象で惚れ惚れとしました。自分の好きなことを仕事にして、好きなファッションとヘアメイクに身を包み、生き生きと働いている彼女の姿を見て、「私もこんな風に働きたい!」と憧れました。その場で雑誌の仕事に興味があると伝えて、すぐに改めて会ってもらって彼女のアシスタントとして働かせてもらうことになりました。
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スピーディーな展開ですね。よく知らなかった世界に飛び込むことに躊躇はなかったですか?
ギーセン
あのまま就職活動をしていたら、それなりに安定した企業に就職して、会社員として普通に働く道も開けていたかもしれません。でも、それよりもそのときの縁を大切にして、自分の“好き”な気持ちに挑戦したかった。親にもその胸の内を話して、大学に通いながら2年ほどアシスタントとして働きました。2020年秋に独立し、今でもその編集部の仕事をやらせてもらっています。これからもっと経験を積んで、自分の可能性を拡げていきたいです。
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今では、森星さんのYouTubeのディレクションも担当されています。これは、どういう経緯で?
ギーセン
森星ちゃんとは、バリで出会って意気投合しました。共有の友達がバリに住んでいて、同じタイミングで遊びに行っていたんです。考えていることや好きなものが近くて波長が合い、帰国後に星ちゃんが「私のアートディレクションをしてほしい」とオファーしてくれました。さっそくYouTubeを作ろう!ということになり、もっと自分たちの感覚をダイレクトに伝えたいと思って、始め外注していた動画編集にもチャレンジすることに。もともと高校時代から遊びで動画編集をやっていたこともあり、けっこう良い感じにできたんですよね。星ちゃんとは、何か閃いた時にも「これ、いいと思わない?」、「いいね!次の週末に撮影しよう!」という感じで話が進むのが早いんです。
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雑誌や動画といったメディアを通して、ギーセンさん自身が伝えたいメッセージはあるのでしょうか?
ギーセン
編集者に憧れる前は、漠然と“環境活動にまつわる仕事”に興味があってボランティアやユニセフについて調べていました。編集の仕事に関わるようになった今でも変わらず環境については意識しています。雑誌も動画も表現方法のひとつ。私はその手段が好きだからそれを用いてメッセージを伝えていきたい。発信できるチャンネルはいくつ持っていてもいいと思っています。
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環境について意識するようになったのはいつからなのでしょうか?
ギーセン
物心ついたときからずっとですね。実家ではコンポストを使っていて、外に出かけたらお父さんに「まずは目についたゴミを拾っておいで」と言われていました。だから私にとって、環境について意識するのは当たり前のことでした。地球を大きい家だと思って、「みんなが自分の周りのゴミを拾っていったら綺麗になるじゃん」と思うんですよね。でも気がつくタイミングは人それぞれです。誰かに言われてやるんじゃなくて、自分で考えて行動しないと意味がないから、私は人に行動を無理強いせずにきっかけになるようなことを発信したいと思っています。善と悪で人をジャッジしたくないんですよね。自分でもあまりに気にしすぎて身動きが取れなくなってしまったことがあるので……。
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メッセージを発信する時に気をつけていることは?
ギーセン
ネガティブにならずに、ポジティブに発信すること。「ペットボトルは買っちゃダメ!」よりも「マイボトルってすごく楽だよ♡」と伝えたい。みんなの心がプラス5パーセントくらい温かくなるような言葉を選びたいです。「Black Lives Matter」がアクティブだったとき、みんな目指している世界は遠くないはずなのに、それぞれの方法を否定していたり、いざこざが起きたりするのが悲しくて……。言葉って強いからこそ、慎重に選びたいと思っています。人の言葉を100パーセントの愛で受け取って、100パーセントの愛で返す。違う人間同士、意見が違うことは当たり前だからこそ「あなたはそう思うんですね。私はこう思うよ」ってお互いの意見を認め合う。他人のことも自分のこともジャッジしない、そんな愛のある発信を忘れずにいたいです。
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自分の価値観や今のクリエイティブにおいて、影響を受けたものを教えてください。
ギーセン
私の価値観を形成したのは、『アミ 小さな宇宙人』(エンリケ・バリオス / 徳間文庫)ですね。全人類読んでほしい!地球人に足りないことを、愛の星から来たアミが教えてくれるんです。都会で生きていると愛を忘れてしまいそうになって自然豊かなところに行きたくなるけれど、この本は自然に触れたときと同じくらいのエネルギーをくれます。あとは昆虫も大好き。自然のものよりも素晴らしい色の組み合わせってなかなかないんじゃないかと思います。やっぱり本が好きで、写真集やアートブックからもたくさんインスピレーションをもらっています。最近はブックショップ「flotsam books」に行って大興奮。リチャード・カーンがただただハイな女の子を撮影した写真集も最高で、他にも色々買っちゃいました。
ギーセン
あとZINEや動画、雑誌の撮影を考えるときに影響されているのは、ソフィア・コッポラやペトラ・コリンズのドリーミーなムード。人のリアルな姿を捉えているサンディー・キムの写真も好きですね。自分でモデルもディレクションもしたZINEを作ったり、定期的にクライアントワーク以外の作品撮りをしています。好きなことだけを思いっきり表現する機会がないと、自分のクリエイティブが死んじゃう気がする。
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仕事と作品作り、両輪があってこそなのですね。これから先の目標や挑戦したいことは?
ギーセン
これからはひとつひとつのスキルを上げていきたいですね。色々挑戦してみて、自分が一体何が好きで得意かがわかってきました。だから、もっと磨いていきたい。「どんなことでも1万時間かければプロになれる」と本で読んだことがあって、自分が好きなことにそれくらい時間をかけて取り組みたいなと思っています。
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BE AT TOKYOに期待していることを教えてください。
ギーセン
面白い化学反応が起きそうな感じがしていますよね。近いところにいるはずなのに会ったことのない面白い人がたくさん登場するようだし、世代もまたいで様々な人との出会いの場になってほしいと思っています。
EDITOR, VIDEO DIRECTOR
ギーセン珠理
ギーセン珠理 / Julie Giesen
編集者・動画ディレクター。雑誌『ViVi』を始め、ウィメンズのファッション雑誌のエディトリアルを手掛ける師匠のもと経験を積み独立。現在は、フリーランスとして雑誌の編集・ライティングなどを手掛ける。プライベートでも交流の深い森星と一緒にYouTubeチャンネルを開設し、ディレクションを担当。月に2本程度、不定期配信中。
Instagram:@juliegiesen(https://www.instagram.com/juliegiesen/
次の東京を創造していく表現者にスポットを当てたインタビューコンテンツ。