SCROLL DOWN

BEAT CAST

GOO CHOKI PAR

エネルギーの詰まった一瞬性を追い求めて。グーチョキパーがグラフィックデザインにこだわる理由。

2021.04.30

Photo:Hiroyuki Takenouchi / Text:Taiyo Nagashima

GOO CHOKI PAR(グー・チョキ・パー)は、浅葉球さん、飯高健人さん、石井伶さんからなるデザインユニット。HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE、PARCO、Red bullのグラフィックを手がけるなど、多岐に渡って活躍している。2020年には東京都現代美術館で開催される「東京2020公式アートポスター展」にも参加するなど、日本のデザインの未来を担う存在と言えるだろう。そんな彼らは「言葉を信用しない」と語った。その裏側には、グラフィックデザインという分野への強い思いと、変わらない日本のクリエイティブ産業への挑戦的な姿勢があった。

絵の中に込められるわくわく感みたいなものに唯一心からしびれる。

(左)飯高健人さん(中)石井伶さん(右)浅葉球さん

もともとこの3人は、どういう経緯で集まったのでしょうか?

飯高

学生時代からの友達なんです。

石井

浅葉と僕は同じ桑沢デザイン研究所に通っていて、横の繋がりで他の美大の友達と遊んだりするようになって飯高と出会いましたね。

浅葉

記憶がだんだん薄れてきちゃった。14、5年前だから。

飯高

仲間内で一緒に仕事をするようになっていって。この3人を含む「tymote」っていうチームを立ち上げたんです。その後、各々が転職とか独立とか、いろいろなタイミングが重なって、グラフィックを担当していたこの3人で「グーチョキパー」を立ち上げました。名前はサクッと決まったよね。

グーとチョキとパー、それぞれが担当を分けているんですよね?

浅葉

そうです。これも自然に決まりました。

飯高

最初俺がチョキじゃない? って。

石井

雰囲気でね(笑)。

飯高

浅葉は絶対グーでしょ! みたいな。

髪型ですか?(笑)。でも、何となくわかるような気がします。自分たちの作品を言葉で説明すると、どうなりますか?

浅葉

グーチョキパーらしさ、ってことですよね。3人ともバラバラなものが得意だったりするので、それをミックスさせて昇華させるところが面白いのかなって思っています。

飯高

浅葉はタイポグラフィーが得意だったり、写真を含むアートディレクションをすることも多い。石井は図形とか、形の処理が上手で、僕は手書きのイラストも描いたりする。得意なことがそれぞれ違うので、それをぎゅっとミックスさせたりするのがグーチョキパーなのかなって。

石井

でも、この前すごい似てるって言われたよ、3人の作ってるもの。

飯高

じゃあ、さっきのは撤回で(笑)。あとは、今の世の中は結構シンプルで落ち着いた表現が多くなっていて、そういうものと一線を画したエネルギッシュな表現をしたいっていうことは、よく話しています。デザインに関して共通するところがベースにあるから、無駄な説明をしないし、そもそも僕らはあんまり言葉を使わないというか。

言葉を使わない?

飯高

普段からあまり喋らないんですよ。言葉に重きを置いてないというか、言葉で表現できることって限られているよね、みたいなことを考えていて。絵の中に込められるわくわく感みたいなものに唯一心からしびれる。そういう体験だけを求めて作り続けてるところはあります。

一点にぎゅっと熱を込めた一瞬性。

確かに言葉は少ないかもしれません(笑)。そんな3人が影響を受けたアーティストについても聞いてみたいです。

飯高

高校生の時に憧れていたのは、世代的にはTOMATOですかね。あとはDELTAっていうグラフィティのアーティストやgroovisionsとか、その辺りです。球さん(浅葉)はグラフィティ系のアーティストとか好きだったよね。

浅葉

好きだった。デザイナーで言うとアレクサンダー・ゲルマンとか、好きでしたね。

石井

雑誌『relax』を読んで、かっこいいな、グラフィック作りたいなって思ってました。 高1かな。当時のグラフィックデザインの熱量に感化されましたね。

飯高

20年前くらいって、デザインの世界に新しい風が吹いていた感じがあって。大人たちがすごい楽しそうにやってるなっていう憧れがありました。自由にやんちゃしてる感じがかっこいいなって。今だと、M/M(Paris)とかも自由にやっていて、憧れですね。

そういう憧れが起点になって、グラフィックデザインに目覚めていく、と。

浅葉

僕の場合は、親父がやってたからっていう、単純な流れなんです。デザインには小さい頃から触れていたので。特に他の道を志すわけではなく、自然と入っていきましたね。

飯高

浅葉の父親の浅葉克己さんて、今でも現役で楽しそうにかっこいいもの作ってるんですよね。GOO CHOKI PARを始めた時も、僕らより先にGOO CHOKI PARのロゴを作ってくれていたり(笑)。その息子もすごく男前だし、最初に会ったときは、やばい親子がいるなって思ったんですよ。で、こう見えてすごくピュアで…。

お互いへの愛を感じますね(笑)。20年前に比べてグラフィックデザインが窮屈になっているというか自由度が減ってる感覚は、私にも分かります。

飯高

ここ20年、グラフィックデザインは進化の速度もゆったりしているし、評価軸も大きく変わっていないと思うんです。カウンターになるような表現も生まれてきてはいるんですけど、ちょっと不真面目というか弱々しい感じになっちゃってるような。熱量を持って、新しい形を見い出したいって話をいつもしてますね。

それは様々なクリエイティブについても当てはまる気がします。

飯高

新しい文化が生まれる世の中の空気感じゃないというか。かつてかっこよかったものがループしている印象です。ファッションだと昔から言われていることではあるけど、それだけじゃつまらないから、新しいものを生み出したいなってずっと思ってるんです。

新しさの種類が技術を用いた新しい手法の開発や、インターネットとの接続によるメディアの変化といった、よりメタな方向に偏っているとも思います。

石井

テクノロジーはうまく使えば表現をどんどん拡張することができる。デジタルが当たり前の世代なのでそこは抵抗なく受け入れている反面、本質的な人間の感性はいつの時代も変わることはないとも思います。自分たちは持ち味である止まったグラフィック1枚の強度を追求したい。

飯高

もちろん様々な表現媒体があっていいと思うんですけど、グラフィックの一点にぎゅっと熱を込めた一瞬性みたいな、そこに価値を感じているんです。まずはグラフィックがあって、そこの表現力の強度さえあれば、どんなメディアにも拡張可能だと思っています。

石井

だから最近は絵を描いています、3人で。

飯高

自分たちの手で描く、一枚の表現に挑戦したいなと思っていて。それで4月から1年間、「VINYL(JR東京駅構内にある美術雑貨店)」っていうギャラリーで毎月3日間だけ絵の展示を開催しています。

浅葉

ぜひ見に来てください。

未知なるものに「これいいね!」って言える機会が、最近はあまりない。

いいですね。それ以外にこの3人で何かやりたいことはありますか?

飯高

場所を作りたいですね。発表する場であり、溜まり場みたいな。アトリエでありギャラリーでもある、みたいな。既存のスペースを使って展示することももちろん大事だと思うけど、そこにある評価軸から離れてみてもいいのかなって。制約から離れて自分たちが自由にもの作りできる場所、みたいなのは憧れますね。それこそ、BE AT TOKYOがオープンした「BE AT STUDIO HARAJUKU」もそうです。

ぜひ、一緒に面白いことやりましょう。

飯高

様々な分野の人が交流するような場になったらいいですよね。日本独自の文化って何だろうってことを最近よく考えているんですけど、そういうことを発信する場所から「これいいね!」っていう感覚がそもそも欠如してるっていうか。

浅葉

基本は全部外来ものというか。『STUDIO VOICE』も『relax』も日本のカルチャーというか注目されているヒト、モノ、コトが一冊にまとまっていたじゃないですか。そういう日本のカルチャーって今ないのかな、あるのかな。

飯高

未知なるものをもっと自由に直感的に楽しめるようになるといいなって。

石井

そこを同じ目線で理解できる人が増えたらいいな、と思っています。

それは、グラフィックデザインそのものの価値を高めていくということではなく、自分たちの大事にしてるものを形にしていくことを着実にやっていくようなイメージですか?

飯高

業界どうこうというのは全く考えていなくて。自分たちで表現の強度を高めていくことが説得力にもなるなって思ってます。

石井

今グラフィックデザイナーになりたい人って、あまりいないと思っていて。なんていうか、憧れを持って目指すような、強烈にかっこいい職業じゃなくってしまった気がします。

飯高

デザインが社会に寄り添うことを重視した結果、純粋なデザインの「芸術性」の魅力が弱まったのかなと。

石井

そういうのはつまらないから、常に挑戦し続け、自由に生きている表現者の姿を目指したいと思っています。

浅葉

やってる仕事はかっこ良くてもなんか生き方がかっこ良くない、みたいな感じかな。その辺りの姿勢も大切にしていきたいですね。

DESIGN UNIT

GOO CHOKI PAR

浅葉球・飯高健人・石井伶の3人のグラフィックデザイナーで活動するデザインユニット。言語・思考を超えた「ビジュアルコミュニケーション」を主軸とし、様々な領域で創作活動を行う。これまでにHOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE、PARCO、Red bullなどのグラフィックを手がけ、「東京2020公式アートポスター」において、パラリンピックをテーマとする作品制作アーティストにも選出。2021年4月より、毎月3日間ずつ展示を開催し、2022年4月に集大成となる個展を開催予定。BE AT TOKYOのWEBサイト、およびBE AT STUDIO HARAJUKUのグラフィックデザイン担当でもある。

instagram:@goo_choki_par(https://www.instagram.com/goo_choki_par/
https://gcp.design

PROJECT TOP

BEAT CAST

次の東京を創造していく表現者にスポットを当てたインタビューコンテンツ。