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BE AT STUDIO HARAJUKU ARCHIVES

Hello my name is NFT

NFTアートは時代を変えるのか。「Hello my name is NFT」の審査員が考える、デジタルとリアルの調和。

2022.09.20

Photo:Kazuma Yamano / Text:Shogo Komatsu

9月24日と25日に、BE AT STUDIO HARAJUKUで開催されるNFTアートのイベント「Hello my name is NFT」。NFTアートは、これまでファッションとアートを結びつけて新たな価値を見出し、メタバースにも出展経験があるBEAMSも高い関心を寄せている。今回のイベントは、一般公募の中から厳選した作品を展示するが、その審査員を務めた4人はNFTアートをどのように捉えているのだろう。NFTアートの現在と未来について話してもらった。

価値が生まれたデジタルアート。

(左から)SN&A 代表 永井秀二、BEAMS 代表取締役 設楽洋、株式会社 Fictionera代表 草野絵美、NFT ART TOKYO代表 工場長

設楽社長も永井さんも、NFTアートを所有されているそうですね。

設楽

〈Bucket Bear〉というNFTアートを手掛けているKouhei Fukushimaさんが、BEAMSカラーの〈Bucket Bear〉で製作してくださいました。NFTアートと併せて、キャンバスにも描いていただいたんですよ。

工場長

いいですね! なんだかんだ僕はフィジカルが好きなので、NFTアートに現物や場所を付随させて、グッズ化やイベント化をしていきたいと考えているんですよ。

設楽社長が購入したNFTアート〈Bucket Bear〉の現物。

永井

現物のほうが売買しやすいですからね。今までデジタルアートは、作品としての価値が付きにくかった。でも昔は、複製できる写真も同じく価値が付きにくかったんです。ところが長い年月をかけて、写真もアートのジャンルとして確立されました。まだデジタルアートには価値が付きにくいと思っていたけど、3年くらい前にブロックチェーンを使って販売されると聞いて、デジタルアートの価値が変わると思ったんですよ。

草野

早いですね。3年くらい前だと、まだNFTって言葉もありませんでした。

永井

周りにデジタルアートを製作している作家がいたので、教えてもらっていました。注目していたのに、少し目を離したら、あっという間に置いていかれちゃいましたよ(笑)。教えてもらいながら〈Kawaii SKULL〉というNFTアートを購入しましたが、さっぱり分からない。

NFTアートを通じた出会いと繋がり。

そもそもNFTとは、どういうものですか?

草野

NFTは、Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略です!とよくメディアでは説明されてますけど……。

設楽

まず、それが難しいですよね(笑)。

草野

そうなんです(笑)。でも、デジタルデータとして考えてみると、みなさんにとって親しみのあるものだと思います。例えば、LINEスタンプや音楽なら買ったことがあると思うし、販売している人だっている。それくらいデジタルデータは身近なものですよね。

デジタルデータの購入とNFTアートの購入は、どう違うんですか?

草野

NFTアートの場合は、所有証明書や鑑定書がブロックチェーンに記録されて、唯一無二のものとして取引できるようになりました。

デジタルデータに資産価値が付いた、と。さっき永井さんがおっしゃっていた、デジタルアートに価値が生まれたというのは、このことですね。

草野

はい。NFTアートは高額の価値が付いたという投資の面にフォーカスされがちですが、私はNFTアーティストに対する、ある種の推し活だと思っています。例えば、私が手掛けている〈新星ギャルバース〉というコレクションなら、VTuber化したりアニメ化したり、NFTアートの先にある展開を応援しながら、一緒にワクワクしてもらいたいです。工場長さんのように、コミュニティを形成している方も多いですし。

工場長

ぼくはNFTアートをきっかけに、人と繋がることに魅力を感じています。NFTアートを通じて出会った、メルカリのタモさん(田面木宏尚 メルカリジャパン 上級執行役員 グローバル推進担当)たちとNFT ART TOKYOというイベントを開催したり、「PBA DAO」と代官山にコミュニティスペースをオープンしたり。バーチャルだけじゃない繋がりを楽しんでいます。

永井

バーチャル上で繋がっている人と、リアルで会うのがおもしろいですね。そこで直接コミュニケーションを取ることで、いい集合体になると思います。

左:草野さんとその仲間たちが運営する新星ギャルバースのOpenSea 右:草野さんの息子の名義〈Zombie Zoo〉のOpenSea

草野

私の息子が〈Zombie Zoo〉というNFTアートを出品したら、世界中の方が購入してくれたんですけど、実は〈新星ギャルバース〉のメンバーのひとりも、〈Zombie Zoo〉の購入をきっかけに繋がりました。普段はシリコンバレーでDropboxのデザイン戦略のヘッドで、一緒に〈新星ギャルバース〉を運営しています。

NFTによって訪れた時代の変わり目。

永井

そういった繋がりが本当にシームレスですよね。海外だとアーティストの知名度を問わず、フラットに作品を見てくれるから、NFTアートを世界に発表できるのはアーティストにとってメリットが大きいと思います。

設楽

今までのアートは、ギャラリーや美術館に来場した人しか観られないものだったし、個人所蔵の作品だったら滅多に観る機会がありませんでした。でもNFTアートなら、全世界のアーティストに発表する機会が公平にあり、二次流通、三次流通していっても、持ち主が分かる上、アーティストにも転売益が還元されるのがいいと思います。

永井

アート作品を買ったことない人が、投資目的でNFTアートを買ったとしても、美術館やギャラリーに興味を持つことがあると思うから、アートシーン全体にとってもいい効果があるのではないでしょうか。

設楽

NFTアートはまだ黎明期で、今後どうなるか分かりませんが、新しい時代の始まりを予感しています。

まさに、NFTが社会に変革をもたらす影響は大きいと思います。

設楽

BEAMSがずっとそうであったように、ぼくは時代の変わり目に立ち会うのが、すごく好きなんです。スマートフォンやSNSによって新たな価値観が生まれたように、デジタルを介した人と人の繋がりやコミュニティが、NFTやメタバースでさらに進化するのではないかと思っています。そんな時代の過渡期は、ワクワクしますよね。

草野

NFTアートって、異文化交流だと思うんです。仮想通貨の投資家とアート好きが交わることはありませんでしたが、NFTアートがそうさせました。NFTアートで、ファッションやスポーツなど、あらゆる分野も盛り上がっていくと感じていて、そこに惹かれています。

永井

まだまだ伸びしろがあるから、今から参入しても、遅いということはないですよね。

特別審査員賞を選出。

今回開催される「Hello my name is NFT」では、選考を通過して展示するNFTアートの中から、特別審査員賞を選んでいただきました。

工場長

どれも魅力的で、選ぶのが大変でした(笑)。

設楽

本当に悩みましたね。好きな作風もあるし、NFTならではの表現もありました。

みなさんが選んだアーティストを教えてください。工場長さんは、特別審査員賞に2名を選出されました。

maeの作品

スンスSNNSの作品

工場長

本当に選びきれず……。一人目はmaeさん。動くピクセルアートを製作されていて、何気ない日常を切り取った風景がすごいと思います。二人目はスンスSNNSさん。作風が好きで、惹かれるものがありました。

Petsukoの作品

草野

わたしはPetsukoさんを選ばせていただきました。色使いもテクスチャーもタイプです。ミニマルで、宇宙の影に惹かれました。いろんな惑星も観てみたい。

Satoshi Miyachiの作品

永井

ぼくはSatoshi Miyachiさん。他の作品も見てみると、ルネ・マグリットのオマージュであると公言していて。リスペクトしつつ、ご自身の作風にアップデートされていました。顔に記号やパターンを描くことで、フィジカルとデジタルを行き来する現代人を表現しているのがよかったです。

k.の作品

設楽

ぼくは、こう来たか! と思ったk.さん。ただ単純に自分の作品を見せるのではなく、メタバース空間に美術館を作り、そこに自分の作品を展示しているのがユニークでした。この発想を含めて、選ばせていただきました。

他にも個性豊かなNFTアートが目白押し。

選出した以外に印象に残っているアーティストはいらっしゃいましたか?

TICTACの作品

工場長

TICTACさんはグッズ化などがしやすく、BEAMSカラーのオレンジのキャラクターなどにも出来そうだなとか、ご自身でも蛍光の蓄光インクを使ったポスターで展示したいというところまで考えているのがよかったですね。

Bonsaiの作品

工場長

Bonsaiさんはエントリー以外の他の作品もかっこよかったです。特別審査員賞に迷ったアーティストの一人ですね。

JH | JELLY HEADSの作品

永井

僕もフィギュアが好きなので、JH | JELLY HEADSさんやPizza3dさんの作品は、立体化したらおもしろいと思いました。

ミロッタの作品

永井

ミロッタさんの作品も迷いました。

草野

たくさん作品があるなかで、私が惹かれたポイントはオリジナリティ。ピクセル画やアニメの、NFTアートらしい作品より、本人の作家性が反映されているものが好きですね。ミロッタさん、YO-COさんの作品も好きでした。

ゆかりの作品

設楽

やっぱり、自分が持っていることもあって、Bucket Bearは今後の展開が気になっていますね。それから、夜中審査していたんですけど、ゆかりさんの作品にドキドキしましたよ(笑)。見る人の気持ちに変化を与える作品っていいですよね。

NFTアートに感じるポテンシャル。

いろんなタイプのアーティストが増えたという実感はありますか?

工場長

まだまだこれからだと思います。今のところNFTアートから、世界中の誰もが知るようなキャラクターが生まれていないので、次はそのステップに進むと思います。あと、フィジカルで製作しているアーティストのほとんどが参入していません。そういった方々がバーチャルのNFTアートに入ってくるとどうなっていくのか。

設楽

確かに、ぼくもそこも興味があります。NFTに興味あるアーティストがいれば、まったくないアーティストもいますからね。

最後に、みなさんは「Hello my name is NFT」にどんなことを期待しますか?

設楽

時代の変わり目を表現するイベントとして、第2回、第3回と重ねていくことで、内容がどのように変わっていくのか楽しみです。今回はぼくらが審査員をさせていただきましたが、一般投票をしてみんなの反応も見てみたいですね。

永井

これまでぼくは、BEAMS TやTOKYO CULTUART by BEAMSで、アートを観てもらう場を設けてきました。それと同じように若手のNFTアーティストを「Hello my name is NFT」で紹介して、今後一緒におもしろいことができればいいと思っています。

草野

そうですね。BEAMSやBE AT TOKYO独自の視点で、新しいアーティストをフックアップしていただけると、NFTアートがさらに盛り上がっていくと思います。

工場長

ぼくは新宿のBEAMS JAPANにしょっちゅう行っていて。4階では若手アーティストの作品を展示・販売していますが、5階にはB GALLERYもある。このようにアーティストと一緒に動いているところがNFTアートに似ていると思うんです。BEAMSに通っているような方々に、もっとNFTアートを知ってもらいたいので、設楽さんや永井さんが審査員をしている「Hello my name is NFT」がいいきっかけになればいいなと思っています。



Hello my name is NFT
日時:2022年9月24日(土)〜25日(日) 11:00~20:00
会場:BE AT STUDIO HARAJUKU
住所:東京都渋谷区神宮前1-11-6 ラフォーレ原宿6F
主催:BE AT TOKYO
企画/協力:クリプトン教授
※入場無料

株式会社 Fictionera代表

草野絵美

日本を代表するNFTコレクション「Zombie Zoo」において、日本初のNFTアニメ化、ピコ太郎とのコラボMV、Web3ゲーム世界的大手Sandboxとの協業などを実現。 2022年、自身がクリエイティブディレクションを手がけるNFTプロジェクト「Shinsei Galverse」を開始し、同年4月のリリースでは世界最大のNFTマーケットプレイスOpenseaの24時間売上ランキングで世界1位を記録した。 アーティスト、東京藝術大学非常勤講師、歌謡エレクトロユニット「Satellite Young」歌唱担当・主宰、執筆家など、多彩な顔を持つ。

https://www.fictionera.co/
Twitter:@emikusano(https://twitter.com/emikusano

NFT ART TOKYO 代表

工場長

NFTアートのクリエイターとコレクターの交流を目的にしたイベント『NFT ART TOKYO』を運営。今年6月に開催された第一回目は、2000人以上が参加して話題となる。第二回を9/29(木)18:00から渋谷TRUNK(HOTEL)にて開催予定。NFTのコミュニティを主宰し、9月にはNFTのギャラリー「EDGEoff」を代官山にオープン。その他にもNFTプロジェクトの国内マーケティング/プロモーションを担当。NFTラグマットの製作にも取り組んでいる。

Twitter:@daikoujyo(https://twitter.com/daikoujyou

BEAMS 代表取締役

設楽 洋

1951年、東京都生まれ。1976年に、原宿の6.5坪の店舗にBEAMSをオープン。アメリカ西海岸から買い付けたアメカジで人気を集め、セレクトショップの草分けとして、あらゆるブランドとコラボレーションを果たす。ファッションとライフスタイル全般やカルチャーを掛け合わせた提案でシーンを牽引し続けている。現在は国内外に約170店舗を展開するほどに成長を遂げた。

Instagram:@taracyan3(https://www.instagram.com/taracyan3/

SN&A 代表

永井秀二

大学卒業後、BEAMSに入社。デザインや商品企画などを経て、2000年にTシャツをキャンバスに見立ててアートを落とし込むレーベルBEAMS Tを立ち上げる。2008年には東京発のアート・デザイン・カルチャーを世界に発信するTOKYO CULTUART by BEAMSを設立。国内外のアーティストによるエキシビションの企画やプロデュースを数多く手掛けてきた。今年2月にBEAMSを退社。現在は、渋谷・桜丘町に12月オープン予定の、マンガ&エッセイ『サ道』の著者タナカカツキが総合プロデュースするサウナ、渋谷SAUNASの企画・運営に携わっている。

https://toyoke.jp/
Twitter:@Radofu(https://twitter.com/Radofu

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