BE AT STUDIO HARAJUKU ARCHIVES
2022/2/20(SUN)〜3/1(TUE)
レディースアパレルブランド「Scǎi tokyo(サイ トーキョー)」の2022 Spring Collectionプレローンチポップアップを開催
© 2020 BE AT TOKYO.
BEAT CAST
HOTOKE
2022.02.18
かつてゲームといえば、ひとりっきりで黙々と……。そんなイメージはすでに過去の話。オンライン上で人と繋がり、eスポーツのトーナメントの優勝者は富と名声を手に入れる時代だ。すでに欧米や韓国、中国ではeスポーツは新しいビッグビジネスになりつつある。とうぜん日本でもそういう動きは出てきていて、それを牽引しているのが、ハンドルネーム「仏」の名で活躍する日本屈指のeスポーツプレイヤー。現在は「フェンネル」というチームを率いて、選手の育成やブランド構築などeスポーツビジネスの分野に進出している。そんな彼に、日本のeスポーツの今、そして彼が思い描く未来のビジョンを聞く。
ー
意外なことに、仏さんはゲームができない環境で育ったんですよね?
仏
そうですね。小中学校は野球のクラブに入っていて、練習に明け暮れてました。
ー
いわゆるゲーム少年ではなかった。
仏
兄弟がいたんでテレビを独占できなかったというのも大きかったかもしれません。携帯ゲームにしても、2時間以上は親が許してくれなかったですね。
ー
ゲームにハマったきっかけってなんだったんでしょう?
仏
高校生の時のオーストラリア留学ですね。ホームステイ先が、PlayStationもXBOXもPCも全部揃ってる家だったんです。やることもないし、ひたすらゲームばっかりやってましたね。
ー
それは何系のゲームだったんですか?
仏
基本、FPS(※First Person Shooter:一人称視点シューティングゲーム)ですね。コール・オブ・デューティとか。オーストラリアはみんなゲーム持ってるんで、友達10人くらいでオンライン上に集まってフルパーティ組んでコール・オブ・デューティ。当時、日本の高校でそういうことやってる人ってほとんどいなかったんで、そこはちょっとカルチャーショックでした。
ー
その後、大学に進学して在学中に会社「FENNEL(フェンネル)」を立ち上げるわけですよね。
仏
そうですね。大学1年の時に「荒野行動」っていうゲームに出会って、2年丸々プロの選手としてやって、3年の時に企業したっていう流れですね。
ー
荒野行動では、日本トップという成績を残しています。そのままプロとしてやるのではなくて、起業したのはなぜなんですか?
仏
結局、毎日同じルーティンになるんですよ。ゲームが出始めた頃は戦術的な部分とか、どうやったら強くなるかを試行錯誤したりして、成長を感じられて楽しいんですけど、気付いたらいつのまにか回すだけになってる。
ー
ある意味、スタイルみたいなものが完成されちゃうんですね。
仏
このままじゃつまらないなと思って、自分のYouTubeで起業したい、みたいなことを語ったら、いまの共同経営者の人が声をかけてくれたんです。
ー
当時はどういうことをやろうと思って起業したんですか?
仏
その時は荒野行動しか知らなかったので、その世界においていかに影響力を高められるか、ということしか考えていなかったですね。そもそもビジネスの構造も良く分かってなかったので、マネタイズのこととかもぜんぜん考えてなかった。いま思えばヤバかったですね(笑)。
ー
いまでは状況はだいぶ変わって来ましたか?
仏
海外の事例を参考にするようになってから、変わりました。海外だと資金調達も当たり前にしていて、アパレル展開などもやっています。そういうことを取り入れられるようになってから、ようやく事業と言えるような形になってきたと思います。
ー
いまはどういった形で収益を?
仏
まずは競技面ですね。プロリーグがあるゲームの場合は、そこで勝つことで賞金をもらえます。そしてスポンサーとか案件配信ですね。いまはそれプラス、アパレルに力を入れているところです。
ー
賞金って、たとえば荒野行動だったらいくらぐらいもらえるものなんですか?
仏
年間数百万円程度の規模だと思います。日本の場合、1人あたり200万円もらえてたらトッププレイヤーなんで、それだけでは全然です。しかも本当にひと握りのトッププレイヤーしか賞金はもらえません。
ー
となると、賞金はあまりアテにならないということですよね。
仏
不安定すぎますね。ただ、大会で勝っていかないと影響力も出てこないので、YouTubeのフォロワーも増えませんし、スポンサー契約やアパレルの売上も伸びません。
ー
なるほど。大会はあくまでも実力を見せる場所で、収益はそこから派生させていくんですね。アメリカや韓国だと、プロゲーマーとして億単位で稼ぐという話も聞いたことがあるんですが?
仏
単純に海外は市場が大きいんです。
ー
日本はまだまだですか?
仏
めちゃくちゃ小さいですね。
ー
ゲームっていったら日本がトップ、みたいなイメージもありましたが、ぜんぜん違うんですね。
仏
競技人口的には多いとは思うんですが、それをビジネスにしていくのが下手なんです。
ー
たしかに、これまでの日本のゲームビジネスってソフトをいかに売るかしかないですもんね。
仏
そうですね。アメリカの場合は、早くからeスポーツというものの可能性に着目していて、それをショービジネス、スポーツビジネスの文脈で解釈しているから、ビジネスとしてこれだけ大きくなっているんだと思います。
ー
それを巻き返すためのプランはあるんですか?
仏
あくまでも僕個人の場合ですけど、ここ1年くらいで有名な芸能人の人とゲームを通じて繋がることが多かったです。そういう人たちを巻き込みつつ、盛り上げていったりしたいですね。それと実は日本って大会の数としては世界的にも多いんですよ。だから規模は小さくても、いろんなところでもっと大会が開かれるようになっていけば、まだまだ伸びしろがあると思っています。
ー
仏さんが好きなゲームの条件ってどういうものなんですか?
仏
考えないと勝てないゲームですね。自分でいろいろと試行錯誤しながら作戦を立てて、勝ち方を構築していく。自分自身の成長を感じられることが好きなんです。
ー
となると、対人というのも条件になってくるんですよね。そうなるといわゆるゲーム好きというよりは、戦略を立てたり、考えることが好きっていうことですね。
仏
そうですね。そしてeスポーツでトップに行くためには、絶対に考えることが必要です。世界と比べて日本が弱いと思うのも、考える量と質だと思います。脳をしっかり稼働させずにひたすらゲームを回してるイメージがあるんですよ。もっと「このゲームの本質はなんなのか」とかを考えないと勝てないですし「1%勝率を上げるためになにをするべきかとか」「こういう状況なら相手はこう動くはずだ」という先読みとか、考えることはいくらでもあるんです。
ー
自分で考えて模索する能力ですね。
仏
日本人がそこが弱いのは、きっと学校教育の影響もあると思うんですよね。ただ黒板を写すだけ。海外の場合はレポートをひたすら書かされるので、おのずと論理的になってくるんだと思います。
ー
でも、話を聞いていると、思考回路的にはスポーツ選手と一緒なんですね。
仏
まったく一緒だと思います。練習メニューなども論理的に考えますし。なぜ必要なのか、それをすることによってなにが改善されるのかなど、きちんと言語化してからやります。感覚的にやっても勝てる時期はあったりするんですが、そのうちに絶対勝てなくなりますね。新しい戦術なんかもどんどん生まれてきますから。
ー
そういう考える能力って、実社会にも役に立ちそうな気もします。仏さんからみて、リアルスポーツよりもeスポーツのほうが優れていると感じることはなんでしょう?
仏
無限に出来るところです。普通のスポーツを一生懸命やったら疲労も溜まるし、怪我だってある。そうなると休まざるを得ないですが、eスポーツだったらそういう心配はないですよね。なにより、走り込みとかするよりも、練習自体が楽しいですしね。
ー
でも経験からすると、ゲームしすぎると眠れなくなったりしませんか?
仏
それはあります。だから睡眠の質には気を使ってます。僕の場合は3時には絶対に寝て、7時間は最低でも寝るようにしてます。ちゃんと眠らないと自分の気付かないところでパフォーマンスがすごく落ちてると思うんですよ。CBDとかを取り入れたりもしてます。
ー
そこらへんもトップアスリートと同じような考え方ですね。
仏
いちおうプロですからね。それくらい本気で取り組まないと上へはいけません。
ー
ゲームの操作や反射神経向上とかのトレーニングもするんですか?
仏
そういうスキルをフィジカルって呼んだりするんですが、いまそこをきちんとトレーニングしている人は少ないかもしれませんね。20代のうちに引退する人が多いです。でも最近は30代でも世界トップ20に入るような人も出てきているので、今後は変わってくるかもしれませんね。
ー
やっている量というのも重要になってくると?
仏
そうですね。日本人を海外の人に比べるとわかりやすいんですが、海外勢って4歳の頃からゲームに触れてたりするんですよ。でも日本の環境とか考え方だとゲームはまだまだ悪なので、そういう人ってほぼいないですよね。今後、そういう経験値というか量が追いつけば、日本が強くなる可能性もあると思います。
ー
聞けば聞くほどスポーツと一緒ですね。いま「ゲームはまだ悪」とおっしゃいましたが、それを変えるにはどうしたら良いと思いますか?
仏
変えるというか、たとえば友達に「ヒマな時間はなにしてるの?」って聞くと「ずっとテレビ観てる」とか答えるワケですよ。僕の場合は時間が空いたら友達と一緒にゲーム。要はコミュニケーションを取りながら遊んでるわけです。それってどっちが良いの?って思ったりはしますね。
ー
たしかに。古いゲームしか知らない世代からしたら、ゲームって友達がいない暗い奴が孤独にやるもの、みたいな印象ですからね。その考え方自体が古い。
仏
そう思います。気軽に友達と集まって遊べるツールという認識ですね。
ー
eスポーツ自体も、日本だとまだまだ発展途上だと思いますが、今後どういう展開が待っていると予想しますか?
仏
現状でも、徐々に稼げるようにはなってきているので、それがもっと進めば「たかがゲーム」という考え方はなくなっていく気はしています。いまの子供たちの憧れの職業のトップどころはYouTuberだったりしますが、そこにプロeスポーツプレイヤーというのも加わってきていますしね。
ー
好きなことを仕事に、ってことですね。その先駆者としての仏さん率いるフェンネルは、責任重大ですね。
仏
それは自覚してます。ゲームで培ってきた考える能力を最大限に活かして、ビジネスのほうもしっかり練り込んでいく必要があると思っています。その先に、eスポーツにもっと可能性を感じるような未来を作っていければ良いなと。
ー
そのきっかけとして、2月26、27日にBE AT STUDIO HARAJUKUで開催するeスポーツのイベントはチャンスですね。
仏
そうですね。将来的には強い弱いは置いておいて、日本のeスポーツは世界的にはイケてるものになっていくと思っています。やっぱりファッション感度が日本のほうが断然高い。欧米だとファッションは富裕層しか興味をもちませんが、日本の場合は中間層でもファッションに興味がある人が多い。だからファッションと上手く融合していくことで、日本独自の路線のようなものが見えてくるんじゃないかなという期待は大きいですね。すでに僕のコミュニティ内では、ゲーマー=オタクみたいなイメージは払拭されています。
ー
今後のeスポーツ界を、ファッションの方面で日本が引っ張っていく可能性があると。
仏
でも、やっぱり強くなるのが一番ですね。弱いのにファッションだけだとやっぱり人は付いてこないと思います。でも、いろんな新しい動きも出てきていますし、日本のeスポーツ界はこれからどんどん伸びていくはずです。
ー
仏さんは今後どうなっていきたいか、展望を伺ってもいいですか。
仏
5年くらいで企業価値を100億円とかにしないと、海外には追いつけないですね。そのためにはやっぱり影響力。だからこの1年はすべての大会でうちのチームが優勝するくらいの気持ちでやらないとダメですね。そのために海外のコーチをオンライン上で招聘するという計画もあります。
ー
ここまで行きたい、みたいな目標はあるんですか?
仏
最終的にはeスポーツのホームスタジアムを持って、そこに5万人くらい人を集められるようになったら良いですね。
ー
そこはオフラインなんですね。意外でした。
仏
やっぱりオフラインでの盛り上がりって大事だと思います。コミュニティを広げる能力はオンラインが優秀なんですが、そこに深さとか熱狂を求めるとやっぱりオフラインなんです。例えば5万人集められるようなeスポーツスタジアムが日本全国にあって、そこに人が集まってeスポーツを観戦するような環境ですね。要はサッカーとか野球みたいに街が一体となってeスポーツチームを応援するような、そんな世界を見てみたいですね。
FENNEL FOUNDER
HOTOKE
大学1年生の時にスマホゲーム「荒野行動」に出会い、その世界のトップに。大学在学中にeスポーツチームの運営や大会運営、グッズ販売などをおこなう「フェンネル」を設立。ストリーマーとしての影響力も大きくYouTube登録者数は19万人超え。
Instagram:@maximushotoke(https://www.instagram.com/maximushotoke/)
Twitter:@MaximusHotoke(https://twitter.com/MaximusHotoke)
次の東京を創造していく表現者にスポットを当てたインタビューコンテンツ。