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BE AT STUDIO HARAJUKU ARCHIVES

LAMBDA TAKAHASHI & JQ(NULBARICH)

高橋ラムダとJQ(Nulbarich)、古着を掘る。新プロジェクト「illmatic sense」が始動。

2021.08.31

Photo:Kazuma Yamano / Text:Masahiro Kosaka(CORNELL)

今も昔も、原宿を代表するカルチャーのひとつである“古着”。時代の大きなうねりにさらされようが、なんのその。その熱は、冷めやるどころかむしろ勢いを増すばかり。ときに、誰かにとっては役割を果たした洋服が、めぐりめぐって別の誰かには価値ある一着となる。その循環はBE AT TOKYOの掲げる「発掘・掛け算・物語」に奇しくも呼応するところ。そこでこの度スタートするのが、新プロジェクト「illmatic sense」だ。毎回異なるゲストを招き、異なるテーマで買い付けた古着をブース販売することで、古着の“今”を多角的に紐解くことにする。第1弾のゲストは、スタイリスト高橋ラムダさんとNulbarichのJQさん。都内某所の地下倉庫で、うず高く積まれた膨大な古着の山からTシャツをメインにセレクトしてもらった。仕事仲間の枠を越えた仲である気心知れたふたりは、何を基準に、何を選び取ったのか。

「自分たちのツボ、似てるよね」、それを確かめ合ってる感じだった。

本日はありがとうございました。それはもう膨大な量の中から、230点を超える古着をセレクトしていただいたわけですが、まず率直な感想を聞かせてください。

高橋

とりあえず、ま〜疲れたよね(笑)。JQにとっては、古着を掘るって初めてのことだったと思うけど、どう?

JQ

やっぱり、レコードのディグに近いなと。やりながらそんな風に感じてました。

高橋

俺は18、19歳の頃にアメリカに渡って、ずっとあんなことをしてたんだよね。でっかいドラム缶ぶっ倒して、古着かきほじって、みたいのを。今回は、それをかれこれ数十年ぶりくらいにやらせてもらって、とても面白かった。

JQ

無心になれる、童心に還れるみたいな感覚もありました。ラムさんとは、普段のスタイリングのときもそうですけど、「今こういうのがいいと思うんだけど!」「いいですね!」みたいのを学校の友達と話すような感覚でやってますよね。今日も「自分たちのツボ、似てるよね!」っていうのを確かめ合ってる感じもしました。

当初は150点選んでいただくことを想定していたのですが、蓋を開けてみると、それを大幅に上回る数に。そこにもひとえに、お二人の関係性が表れているんじゃないかと、かたわらで様子を見ながらに感じていました。キャッチボールやジャッジが、とにかく早いんですよね。

高橋

JQとは、スタイリストとしてご指名をいただいてからずっと一緒にやってますからね。それだけ積み重ねてきたものもあるし、反対に削ぎ落とされてきたものもあると思う。最近はもう、大きなステージ用の衣装を何パターンか持って行っても、何も言ってくれないですからね(笑)。一応全部袖は通してくれるんですけど、「で、ラムさんはどれがいいんですか?」なんて言って。

JQ

明らかに光ってるものがひとつあるんですもん。絶対ラムさんの中で答えは出てるはずだから、もう最初から言ってくださいよって(笑)。最初の数年はラムさんもちゃんとスタイリストやってくれてたんですけど、もう最近は違いますよね?(笑)。

高橋

いや、そんな風に言っちゃうとお金をもらってる手前……(笑)。まぁでも、そうですね。無駄にお金をかけず、その分ピンポイントでかっこいいものを持って行くようになりました。

JQ

あとは、古着屋で見つけた洋服を、「これよくない?」「いいですね!」「じゃあ次のフィッティングに持って行くわ!」みたいにLINEでやりとりしたり。仕事の枠を越えちゃってる感じがします。単純に、ラムさんの選ぶものが、自分の欲しいものなんでしょうね。

着るときよりも、選んでいるときの方がはるかに面白い。

ステージ衣装などのスタイリングにおいても、古着をよく使っているということですか?

高橋

全身メゾンブランドでスタイリングを組んだりしてた時期もありました。でも最近は、あまり気持ちがそっちのほうに向かないというか。古着で良くない?って。だから、僕の最近の生息エリアはほぼ下北なんですよ。

JQ

ワコマリアとかデラックスも仲良くさせていただいてるし、よく着るんですけど、いわゆるハイブランドとドメって意外と合わせるのにハードルが高いと思ってて。ボディの違いとかシルエットのズレが気になるんです。でも、古着はハイブランドにも合う。相乗効果が生まれるというか。

高橋

本当そうなんだよねー。

JQ

なので、ラムさんから古着のいろんな知識を得ながら、「いい古着を着よう」っていうモードに今はなってますね。

高橋

僕のアシスタントなんかも、今はほとんど古着しかリサーチしてないもん。もう、古着一辺倒(笑)。

今回、倉庫にうず高く積んであった古着の9割方は、いわゆるヴィンテージでも、レギュラー古着でもありませんでした。内容に一貫性があるわけでもなく、なかには、どこから集めてきたのかもわからないような洋服も混じっていました。JQさんの言うところの“いい古着”とは、ベクトルが違うというか。実際あの倉庫に足を運ぶのは、プロのバイヤーのみならず、メルカリなどで服を売買しているサラリーマンや主婦も多いとか。そんな中から価値あるアイテムを見つけ出すのはかなり骨が折れる作業だったと思います。お二人は今回、どんな基準で古着を選んだのでしょうか?

JQ

ボディで選んだものはわりと多かったですよね。年代によるボディの違いが、やはり古着の面白さのひとつですし。

高橋

今回は、JQが感覚でピックしたものを僕がタグとかを見てジャッジする、みたいな流れがありましたね。ボディもそうだけど、やっぱりさ、なんせタグが可愛いんだよね。「デ・ラ・スポーツ ヘルシーメニュー」って書いてあるタグとか、De La Soulを完パクしてて、もう最高(笑)。

もはやタグだけでセレクトしていたものもありましたよね。でも、結局そこがボディともリンクしていたりすると。

JQ

タグが一番イケてたときのボディですからね。関連はあると思います。あと、ネタものもかなり見つけました。

高橋

ネタもの多めだね。合コンとか行って、一発笑ってもらえたら嬉しいな、くらいの。

JQ

今誰も着てないでしょ! みたいなブランドのTシャツとか、結構良いのあったな。お父さん着てたな〜!みたいな(笑)。

高橋

これもやばいよね、『Hot-Dog PRESS』のTシャツ。俺、ぜったい買いたいもん(笑)。女性の口説き方とか、これ読んで勉強してたもんな〜。

JQ

このウォーリーを探せのTシャツは、倉庫に入って一番最初に目に入ったもの。あの雑多な古着の山の中から、一発目にウォーリーを探し当てたんです(笑)。これはピックしとかなきゃなと。実は古着って、着るときよりも選んでるときの方が面白いのかもしれないですね。

時間をかいくぐって、生き残った証。

高橋

ボディのヤレ具合がすごいのとかも結構あったじゃん? ネタものとかもそうだけど、そういうのを、自分の中でどうクリアしていこうか、乗り越えていこうかっていうのも古着の楽しさのひとつだよね。

JQ

古着って、わりと“ガチャ”だと思ってるんです。店に並んでるときはカッコいいと思っても、着てみると、腑に落ちるまでに割と時間がかかることもあったり。

JQさんのニューアルバム『NEW GRAVITY』の中には、かなり前に書いたリリックを掘り起こして曲をつけたタイトルもあると聞きました。洋服もそうやって、以前手に入れていたものが時間を経ることでしっくりきたり、別の新しい感覚で取り入れられたりする。どこか似ている気がします。

JQ

かなり近い感覚だと思います。古着って、いろんな工程をかいくぐって誰かの元に届くわけじゃないですか。誰かが着飽きたものを売って、買い付けに行った古着バイヤーがピックして、またさらにそこから店舗のバイヤーが選んで。そうして僕らみたいな人のもとに届く。自分の曲だったらハードディスクに入れておいて後から聴き返せばいいけど、古着はいろんな時系列をクリアしているのが面白い。そういう生き残った証みたいのが、ボディやディテールに感じられますよね。

高橋

そうだね。日本では「古着」って言われるけど、アメリカでは「セカンドハンド」とも呼ばれるからね。それぞれの時間を経てきたからこそ、二つとして同じものは見つからないし、完全に個性の塊っていうかさ。オートクチュールっていう言葉もあるけど、自分用に誂えられたわけじゃなくても、一人ひとりのオートクチュールは古着で見つけられるよね。今回やってみてそんなふうに思いました。

JQ

まぁ、とにかく面白いものを大量にセレクトしたので、あとは実際にここ「BE AT STUDIO HARAJUKU」に来て確かめてもらうということで。

ありがとうございます! 最後に、もしまた同じような企画をやるとしたら、どんなテーマがいいですか?

JQ

もう1回同じことやりたいですね。その方が面白くないですか?

高橋

そうだね! この二人前回と選ぶものまるっきり違うじゃん! みたいな(笑)。

今回ピックアップした古着を2人がスタイリング!

「ジミーズのショーツにホットドッグプレスのTシャツと蛍光グリーンのトラックスーツ。完全に80'sの装いですね。そこに合わせるNOMO先輩。これだけは外せません(笑)」(高橋ラムダ)

「めちゃくちゃイケてるんですけど、めちゃくちゃハードル高めなコーディネート。この感じ、カリフォルニアでよく見かけます(笑)。もちろんトップスはタックインで!」(JQ)

illmatic sense vol.1

開催期間:2021年9月4日(土)〜12日(日)
会場:BE AT STUDIO HARAJUKU
住所:東京都渋谷区神宮前1-11-6 ラフォーレ原宿6F

さまざまなカルチャー情報を発信するメディア、BE AT TOKYOサポートのもと 、東京・ラフォーレ原宿6Fにオープンしたコミュニティスペース・BE AT STUDIO HARAJUKUが手掛ける新たなプロジェクト「illmatic sence」。

その名の通り「ヤバいセンス」を意味する本企画は、BE AT TOKYOが注目するスタイリストやミュージシャン、デザイナー、ショップオーナーを軸に、それぞれの視点から古着をセレクトし、それを展示・販売するというもの。

記念すべき第1回目のセレクターは、公私ともに親交のあるJQ(Nulbarich)さんとスタイリストの高橋ラムダさん。「THE TEEEE’S」をコンセプトに、彼らが古着倉庫から1日かけて厳選した250点以上の古着が、期間限定でBE AT STUDIO HARAJUKUに並ぶ。

また、彼らがデザイン監修した限定のスーベニアTシャツも発売。さらに、本日公開になった映像には、セレクト時の様子やセレクトした古着についての解説や着こなし、スタイリングなど、イベントがより楽しくなる内容のトークが繰り広げられているので、併せてチェックしてほしい。

Stylist

高橋ラムダ

販売員だけではなく編集者、ヴィンテージウェアのバイイングなど、様々な形でファッションの経験値を積んだ後、白山春久氏に師事。2008年に独立。以降の活躍ぶりは周知の通り。オリジナリティあふれるスタイリングは国内外問わず支持を集め、雑誌やカタログ、海外コレクションなど、その仕事は多岐に渡る。 2017年より自身がデザインを手がけるブランド、R.M GANGをスタート。YouTubeチャンネル「デリバリースタイリング」も必見。

YouTube:https://www.youtube.com/c/LambdaTakahashi
Instagram:@tkhslmd(https://www.instagram.com/tkhslmd/

ARTIST

JQ(Nulbarich)

シンガー・ソングライターのJQが(Vo.)がトータルプロデュースするNulbarich。 2016年に1stアルバム『Guess Who?』をリリース後、わずか2年で武道館ライブを達成。日本はもとより中国、韓国、台湾など国内外のフェスは既に50ステージを超える。生演奏、またそれらをサンプリングし組み上げるという、ビートメーカー出身のJQらしいスタイルから生まれるグルーヴィーな音は、バイリンガルなボーカルと溶け合い、エモーショナルでポップなオリジナルサウンドへと昇華する。「Null(何もない)」けど「Rich(満たされている)」。バンド名にも、そんなアンビバレントなスタイルへのJQの想いが込められている。2021年4月にリリースしたニューアルバム『NEW GRAVITY』を引っ提げて、10月より全国ツアー「The Fifth Dimension TOUR 2021」を開催する。

Instagram:@mrjeremyquartus(https://www.instagram.com/mrjeremyquartus/

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