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LALANDE

SNSネイティブに育ったお笑い芸人、ラランドの現在地。

2021.02.05

Photo:Yosuke Demukai / Text:meiji (marble studio)

スタイルの乖離はさておき、日本における“お笑い”の起源は、700年代にまで遡ると言われている。現に森銑三、柴田宵曲、池田孝次郎の著書『日本人の笑』では、『古事記』の一説にも笑いの文化を見出している。 現代のお笑いのルーツは、高度経済成長を機に誕生したと考察する。萩本欽一やザ・ドリフターズに始まった漫才ブームは、今日まで途切れることなく続き、お茶の間に笑いを届けてきた。 ラランドは、2020年代の漫才界から新境地を開拓する気鋭のコンビだ。所属が当たり前の芸能界において、フリー(無所属)ながら「M-1グランプリ2019」準決勝まで進出したのは、未だ記憶に新しい。サーヤ(ボケ担当)、ニシダ(ツッコミ担当)共に上智大学出身という高学歴の2人だが、キャラクターは現役OLとニートと非常に対極的。しかし、同じサークル出身ならではの息のあった掛け合いは、養成所出身のコンビにはない気持ちよさがある。 ラジオにYouTube、そして互いの得意分野のおいて、ソロでも精力的に活動するラランド。令和を牽引していくであろうエンターテイナーの出生から未来予想図まで、時間軸をなぞりながら、彼らならではのスタンスを探った。

所属しないことで見えてきた相乗効果。

お二人は大学が一緒だそうですが、出会った頃のエピソードを教えてください。

サーヤ

大学の初日に後ろで「俺、早稲田も受かったけどね」と大声で嫌味な話をしている奴がいるなと思い、振り返ってみたら、それがニシダでした。ファーストインプレッションで「こいつは好かんな」と(笑)。

ニシダ

俺は覚えてないけどね。

サーヤ

でも、私は大学入学前からお笑いサークルに入部することを決めていて、サークルの先輩から「肥満体型か外国ご出身の人いたら連れてきて」とオーダーを預かり、“好かない早稲田君”のことを思い出して。そうしたら、たまたま参加したアカペラサークルの新歓で互いに浮いていたので、ニシダに声をかけ、お笑いサークルに勧誘しました。

サーヤさんはなぜ、お笑いをやりたかったのですか?

サーヤ

『ダウンタウンのごっつええ感じ』の影響ですね。何度も見るほど、あの番組が大好きで、ダウンタウンさんは小さい頃から憧れの存在でした。家でもテレビを見るならバラエティ。ドラマで見た記憶があるのは『花より男子』ぐらいで、あとはディスカバリーchか、ディズニーか(笑)。

ニシダ

俺たちは世代的にもお笑い番組に恵まれていましたよね。『水10!』『はねるのトびら』『ココリコミラクルタイプ』『爆笑レッドカーペット』と、名前を挙げ出したらキリがない。

でも、お笑いを“見る”と“やる”の間には、大きな壁があると思うんです。

サーヤ

最初は子供の頃に見ていたお笑い番組のものまねを学校でして、それが楽しかったんでしょうね。小学校の頃は誰もが一度はやったことあると思うんですけど、私にとってはそれが遊び以上のものになったんだと思います。

ラランドとして活動が軌道に乗ったのはいつ頃になりますか?

ニシダ

僕たちはフリーなので事務所から仕事が来るということはなく、それ以外では『M-1グランプリ』に挑戦するぐらい。でも、2019年に出場した『M-1』で準決勝まで進出することができ、敗者復活戦の放送でTV初出演を果たしました。

サーヤ

その『M-1』を境に、いきなりオファーが殺到して、2人では手が回らなくなったので、今のマネージャーに声をかけて、昨年2月ぐらいから3人4脚で本格的に活動をしています。

お二人は漫才はもちろん、YouTube、そしてラジオの活動にも精力的ですよね。今ではTBSラジオで冠番組『ラランドの化けの皮』もご担当されていますし。

サーヤ

そうですね。GERA放送局で配信している『ラランドの声溜めラジオ』が、私たちにとって初の冠になります。それも『M-1』の準決進出が大きかったです。

ニシダ

ラジオとTV、YouTubeの違いは、カメラが回ってないという点ですね。基本的に2人で話すので、周囲に気を遣わずに好き勝手できますし、そういう意味ではラランドの日常やリアルな温度感が伝わっているのかもしれません。

フリーであることにメリットやデメリットを感じることはありますか?

サーヤ

単独ライブ、YouTube、取材問わず、その仕事の全貌の大部分を把握して臨めるのは大きいと思います。所属であれば通常、ある程度会社がまとめた状態でパスをくれますが、私たちは最初の打ち合わせから参加して現場をこなすので、ひとつの仕事に対してしっかりと体重をかけられていると思います。大きい事務所だと、先輩が蹴った仕事が降りてくることもあるでしょうけど、私たちは“私たちの窓口”に“私たちをキャスティングしたい人”が企画書を書いて送ってくれるので、こちらの熱量も高いですし、色々と相乗効果を感じることは少なくありません。

ニシダ

デメリットは、人付き合いですね。事務所の先輩・後輩などもないので。

サーヤ

私も、最初は今ニシダが言ったことがデメリットだと思っていたので、現場など行く先々で連絡先を渡して、飲み会などの集まりに誘ってもらうなど、輪に入れてもらうような努力は怠らないようにしています。逆に、フリーは裏を返せばどこにでも顔を出せるので、最近はメリットとも感じるようになりました。

芸の肥やしは学生時代からの読書。

サーヤさんはOLとの二刀流。そのサーヤさんが企業勤めとして働かれているとき、ニシダさんは何をされているのですか?

サーヤ

それ、私も気になりますね。ニシダって何してるの?

ニシダ

土日は競馬。平日は本を読んだりしています。

サーヤ

ニシダって、本当にたくさん本を読むんですよ。でも、全然教えてくれないし、それをアウトプットしないんです。

読書家なんですね。芸人の本紹介だと、オリエンタルラジオの中田敦彦さんはご自身のYouTubeチャンネルでジャンルレスに優良本をご紹介されていますよね。

ニシダ

僕は、あまり他人に読んだ本の話しはしないタイプかもしれません。

サーヤ

もったいないよ。でも、ニシダは26歳なんですけど、少し前に「20歳の自分に贈る言葉」のような本を読んでいた記憶があって、そのときは「過去に贈る言葉なんてないだろ」と思いましたけどね(笑)。最近、印象的だった本とかないの?

ニシダ

『聖なるズー』かな。開高健ノンフィクション賞を受賞した、濱野ちひろさんの作品です。文化人類学を研究する作者が、実際にドイツで出会ったズーと呼ばれる動物性愛者たちと生活をし、セクシュアリティの多様なあり方について考察するもので、一見、ジャンルに抵抗を感じるかもしれませんが、動物性愛を扱うというトピックスの奇抜さも含め興味本位で読みはじめました。しかし、動物性愛という観点から人間の性愛や社会での関係性など普遍的ではありますが、多様な価値観が混在するテーマを問い直すアカデミックな内容の本でした。あとは、少し古い作家ですが、坂口安吾さん。『堕落論』や『白痴』とかはみなさん聞いたことあるかもしれませんが、文学的な本も比較的好きなジャンルです。

サーヤ

コンビ成長のためにもっと積極的に話してよ。ラパルフェの「尾身映画」ならぬラランドの「ニシダ小説」的な。

ニシダ

このインタビューの読者の誰が「尾身映画」知ってるんだよ(笑)。ほぼ身内ネタに等しいからね(笑)。

お互いのフィールドをもっと広げていきたい。

さて、話は変わりますが、ラランドは単に従来のお笑い芸人とはカテゴライズしづらい個性や色があるように感じます。Z世代は正真正銘のデジタル・SNSネイティブで、セルフブランディングがとても上手な世代ですが、お二人は何か、日頃の活動や仕事におけるルールを設けていたりしますか?

サーヤ

仕事は何でも引き受けるわけではないですね。でも、自分がアガる仕事は積極的に参加させていただくようにしています。例えば、番組の企画書を拝見したときに「誰でもいいポジション」と「是非、ラランドに」というオファーでは、こちらも熱量が変わるのは自然なことだと思います。

ニシダ

それはあるかもしれないね。

サーヤ

2月には新会社の立ち上げが控えているので、もっと色々なフィールドに活動の幅を広げていきたいですね。ネタもやり続ける、もちろん『ごっつええ感じ』への憧れもあるので、売れてテレビにも出たい。私自身は服も好きだし、美術部だったので絵やアートにもトライしたいし、音楽も大好きで、ニシダも競馬好きとして、実際に競馬番組から仕事をいただいています。今は好きだからこそ断っている仕事もあるので、やりたいことはまだまだ消化しきれそうにありません。

結成10年まであと3年に迫っていますが、そうした節目を迎える頃、お笑いの世界から新境地を開拓する存在として、どのような未来を思い描いていますか?

ニシダ

辛いことからは逃げてきて、全てにおいて楽しいことしかやってこなかったので、できるだけ楽しいことをいっぱいやりたいですね。

サーヤ

フワッとしてるな!(笑)

ニシダ

でも、僕も大人なので、辛いことから逃げないようになりたいとも思っています(笑)。

最後に、お二人にとって「東京」ってどんな街ですか?

ニシダ

かっこよくは言えないですが「志の集合体」でしょうか。地方から何かを成し遂げようと意気込んでやってくる街なので、熱量が充満している感じがします。

サーヤ

私は八王子出身なのですが、西東京と都心部では全く「景色」が違います。地元から都心までは中央線で一本で移動できるけど、いきなり緑がなくなる切れ目があって。渋谷や新宿は世界が憧れる文化の集合体で、刺激や学び、出会いがあり、表現する機会にも恵まれています。でも、そうした空気感に身を置き続けるとどうしても疲れてしまいますが、私にとっての八王子のように、喧騒とは無縁な落ち着くエリアもあって。東京を一言で説明するのであれば、「グラデーション」というワードがぴったりな気がします。

COMEDIAN

ラランド

2014年、上智大学の同級生だったサーヤ(ボケ&現役OL)とニシダ(ツッコミ&ニート)によりコンビ結成。事務所に所属していない、フリー芸人。コンビ名の由来は、地球から8.21光年の距離にある恒星「ラランド21185」から。昨年9月よりTBSラジオにて、初の冠番組『ラランド・ツキの兎』がスタート。同年、『M-1グランプリ』にアマチュアとして出場し、準決勝に進出。

Instagram:@sa__yah(https://www.instagram.com/sa__yah/
https://www.lalande.jp

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次の東京を創造していく表現者にスポットを当てたインタビューコンテンツ。