BEAT CAST
ARTIST
TENNESSEE LOVELESS
テネシー・ラブレスだけに見える、この世の色。
© 2020 BE AT TOKYO.
BEAT CAST
PROFESSOR KRYPTON
2022.07.27
最近よく耳にするNFT。Non-Fungible Token(ノン-ファンジャブル トークン)の頭文字で、日本語で言うならば「証明書付きの唯一無二のデジタルデータ」。そのシステムを使ったNFTアートがいま、注目を集めている。iPhoneの自撮りもだし、教科書の落書きさえも、デジタル化すればそれがNFTアートになるというわけ。そんな世界に身を投じたクリプトン教授は、自身でアートを描き、NFT市場で売買し収益を得ていると言う。9月に「BE AT STUDIO HARAJUKU」で開催されるNFTアートエキシビション「Hello my name is NFT」を前に、クリプトン教授にNFTのイロハを聞いた。
ー
本日はよろしくお願いいたします。まず、なんとお呼びしたらよいでしょうか?
クリプトン教授
一応、周りからは教授と呼ばれていますね。
ー
それでは、教授と呼ばせていただきます。いま、NFTアートの世界で活躍されていますが、元々、絵がお好きだったんですか?
教授
小さい頃は漫画を見ながらそのキャラクターを描いたりはしてましたね。その程度です。
ー
大人になってから絵は描いていなかったと。
教授
学生時代に服飾の専門学校に行っていて、そこでデザイン画なんかは描いてました。いまアパレルメーカーに勤めているんですけど、業務上はまったく絵と関わりはないですね。
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NFTアート作品を作るにあたって、本格的に描き出したということですか?
教授
そうです。ただ、最初はそんなに明確な目的はなくて「NFTアートというものがあって、それが仮想通貨と関わりがあるらしい」くらいの情報だったんです。そこから調べていくうちにNFTのイラストが高値で売買されてることを知って「誰にでも可能性あるじゃん!」と思って、なんとなく描いてみたのがはじまりです。副業っていうか小遣い稼ぎくらいの感じで。
ー
実際に儲かりましたか?
教授
最初は「ラップパンクス」というタイトルで、海外のラッパーをモチーフにしたドット絵を描いていたんですけど、それが全然売れなくて(笑)。そこからリサーチしていって、どうやら動物系のモチーフをSNSのアイコンにするのが流行っていると知って、いま描いているワニの絵にシフトしていきました。そこからは、小遣い程度は稼げていると思います。ワニが有名になったことで、「ラップパンクス」もいまでは完売するまでになったので。
ー
売れたきっかけは何だったんでしょうか?
教授
仮想通貨の世界ですごく有名なインフルエンサーがいて、彼のTwitterスペースでトークする機会があったんです。そこで宣伝してから徐々に売れ出した感じですね。
ー
ちなみに、最初に出した「ラップパンクス」の作品は、ひとつおいくらだったんですか?
教授
0.01とかで出品していました。
ー
0.01というと?
教授
0.01イーサリアムです。NFTアートを売買するときは、現金ではなく、基本的には“イーサリアム”という仮想通貨を使うんです。ちなみに、いまは1イーサリアムが20万円ほどですけど、絵が初めて売れたときは1イーサリアムが30万円くらい。なので、当時の価格で約3,000円でした。
ー
改めてなのですが、NFTというのはなんなのか、簡単に説明していただけますか?
教授
簡単に言うなら「証明書付きの唯一無二のデジタルデータ」です。データがデジタルであるなら、イラストでもいいし、3Dの画像でもいいし、動画や写真でもいい。そのすべてがNFTアートになり得ます。
ー
デジタルだけど、コピーはできないということですか?
教授
コピーすることはできます。ただ、データの情報を見たときに、わかりやすく言えばシリアル番号が違うんです。だから逆に、有名なNFTはコピー品が大量に出回っていたりしていて、詐欺も多かったりするんですよね。
ー
NFTは仮想通貨のイーサリアム以外では買えないという認識で合っていますか?
教授
もちろん一部例外はありますが、NFTは「OpenSea」というプラットフォームでの売買がもっともメジャーで、そこの売買もイーサリアムでの取引がいちばん多いんです。
OpenSea Rankingの2位(7月22日現在)にいる「Bored Ape Yacht Club」。マドンナ、グウィネス・パルトロー、パリス・ヒルトンなんかも購入者のひとり。
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そもそもNFTを買う人は、漠然と“お金持ち”という印象があったのですが、それは「NFTは仮想通貨を持ってなきゃ買えない」ということに起因していたんだなと。
教授
たしかにそれはありますけど、実はそんなこともなかったりして。
ー
実際どんな人が買っているんでしょうか?
教授
NFTを売買するには必ずアカウントが必要で、そこから購入履歴なんかも見られるんですけど、それを見ていると高額なNFTばかりを持っている人もいます。ただ、それはごくわずかで、ほとんどは、ぼくらと変わらない一般人です。ぼくもNFTアート作品をつくっている人たちでオフ会を開くことがあるんですけど、そのとき集まるのも普通の人たちばかりで。
ー
オフ会が開かれているとは驚きです。
教授
普通の主婦の方もいますし、上下ジャージの人もいます(笑)。そうした場で有名なNFTアーティストと対面して「この人がこの絵を描いてるの!?」みたいな驚きはよくあります(笑)。逆にぼくも「全然教授じゃないじゃん!」って言われますしね。
ー
儲けるシステムを教えていただきたいです。
教授
シンプルに、自分のNFTアート作品が売れることがひとつ。それと、ぼくの作品をAさんが買ったとします。AさんはそれをBさんに売ることができるんです。Aさんはその差額で儲けが出る。なのでAさんは、値が上がりそうなものを狙って買うということですね。
ー
その場合、教授は最初に売れた金額だけが儲けということですか?
教授
いえ、自分の作品が売買されるたびに手数料が入ってくるんです。つまり、AさんがBさんに売るときの手数料ということですね。なので、出品者からすると売買される回数が多いほど儲かるというわけです。
それと、もうひとつの実例として、あるアーティストが、1万点のNFTアートを無料で出品したんです。無料だから、もちろんみんな買うんですけど、それがどんどん転売されていったんです。となったら、手数料がめちゃくちゃ入る。そんなマネタイズのパターンもありますよね。
ー
いまの話を聞く限り、アートとして楽しんでいる人は少ないんでしょうか?
教授
ぼくも最初はそう思ってました。NFTアートは買わずとも画面上で見れるわけだし、実物がないから所有欲も満たされないと。ですが、実際に買って、いざ自分のものになると「この作品は俺のものなんだ」って不思議となるんですよね。それをSNSのアイコンなんかで使うと、より愛着が深まるし、所有している感覚になるというか。
ー
実際に、投資の対象として見ている人と、純粋にアートとして楽しんでいる人の割合はどのくらいなんでしょうか?
教授
と言っても、ほぼ投資の対象ではあります。安く買えるときに買って、値が上がったタイミングで売りさばくと。
ー
なかには「そんなものが?」っていうNFTアートが数千万円で取引されている世界だから、たしかに、誰にでも富豪になれる可能性はありますよね。
教授
何かのきっかけでバズれば、簡単に値は上がります。YouTubeでもSNSの世界でもそうですけど、例えば有名人がポストしてくれただけで、作品の価値は上がるわけで。
ちょっと前の話ですけど、インドネシアの学生が1日1枚自撮りをして、撮り溜めた写真を一気にNFTとして出品(写真上)したらめちゃくちゃ売れて、億万長者になっていましたし。思いつかないようなことが起きるのがNFTの世界なんです。
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今後もNFTの世界は伸びていくと思いますか?
教授
まだまだ認知度も低いので、伸びしろはめちゃくちゃあると思っています。例えばアメリカだと、エミネムであったりスヌープ・ドッグであったりがNFTを買っていて、それをSNSのアイコンにしてたりするんです。でも、日本の著名人でNFTを買っている人はほぼいない。なので、そういった影響力のある人たちが買い始めたら、もっと普及していくと思います。
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明確なゴールはありますか?
教授
元々、服飾の専門学校でデザインを勉強していたので、その頃からいつかは自分でものづくりをしたい思いがあったんです。それが、こうして自分の作品のワニが広がったことで、それをプリントした洋服も作れて、実際に買ってくれる人がいるというのがうれしくて。なのでゴールではないですけど、夢は少し叶ったなと。
ー
そしてここ、「BE AT STUDIO HARAJUKU」では、9月にイベントが開かれるんですよね。
教授
だいたい60組ぐらいのNFTアーティストに参加してもらって、NFTアート作品を展示する予定です。ただ、一番の目的は、NFTを知らない人に体感してもらうということ。どこかとっつきにくい印象のあるのがNFTなので、まずはそこを解消したいですね!
イベント開催にあたり、NFTアーティストの参加者を募集中。
応募はこちらから!https://discord.com/invite/SY6gzfPq(期間:〜8/14まで)
ー
例えば「NFTのHOW TO」みたいなパネルがあったり?
教授
そうですね。どうやって買うのか、みたいなこともわかりやすく展示したいです。
ー
でも、NFTはデジタル上のデータですよね。展示も難しそうな気がします。
教授
なので、モニターであったりタブレットなんかも使うだろうし、紙で見せるという可能性もあります。そこはちょっと、ハイブリッドな展示の方法にチャレンジしてみようかなと。
ー
これまでも、NFTアートをリアルイベントで見せることってあったんですか?
教授
ここまで大きい規模のものは、ぼくが知っている限りでは初めてですね。それと、今回は来場者の方にNFTアートを無料で配ることもしてみたい。
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たしかに買うハードルは高そうなので、それはひとつ、きっかけになりそうです。
教授
結局、NFTを売買する前に、アカウントを作るのもそうですけど、やらなきゃいけないことがたくさんある。そこのハードルが高いんだけど、無料でもらえるなら作ってみようかなってなるじゃないですか。その無料で配ったNFTアートが超バズりしてめっちゃ儲かる、なんてことも夢ではないので。
NFT ARTIST
クリプトン教授
1986年生まれ、東京出身。服飾の専門学校を卒業後、裏原系アパレルメーカーに勤務。現在は某アパレルメーカーで生産管理を担当。NFTアートの作品を2021年から描き始め、現在は日本でも屈指のNFTアーティストに。
Twitter : @Professor___c
次の東京を創造していく表現者にスポットを当てたインタビューコンテンツ。